光造形用のスライサー「CHITUBOX」と「Lychee」の比較
光造形機を使用するのに必須のスライサーソフト。無料のスライサーの選択肢があまりなく、多くの人が3Dプリンター標準のスライサーかCHITUBOXを使っているのではないでしょうか。
CHITUBOXもプリントの設定からサポートの設定まで調整が可能なので、別にいいのですが、他にもないかなぁと思って探していたら最近Lycheeなるものを見つけて、なかなか使えそうだったのでCHITUBOXと比較してみました。
Lycheeとは?
LycheeはMango3Dが開発したスライスソフトで無料版と有料版のproがあります。
無料版は機能制限がありますが普通に使えます。全ての機能が使えるpro版は月に数ユーロ支払うことで利用可能です。(年間契約で割引あり)
Lycheeの画面はこんな感じ
見た感じは普通にいいと思います。
左側に基本メニューが並んでます。
プリントのセッティングがちょっと分かりづらいところにありますが、↓のような項目をいじることができます。
初期レイヤーと通常レイヤー、リフトのスピード設定、レジンボトルの価格設定といった感じで、必要な項目は一通り揃っていそう。
次にサポートの設定を見てみます。
このメニューが若干見づらいのですが、サポートの太さ、サポート密度、Islands Detectorなどの 設定が並んでます。Generate Automatic Supportで自動でサポートをつけてくれます。自動でサポートを付けた後に手動で追加削除することも可能です。
設定項目の中にはproの表示があって、proバージョンでしか設定できない項目があります。
例えば、サポートの柱の形状選択も無料版ではConeのみしか選べませんが、Pro版では他にも選択肢があります。
Pro版で設定できる項目はMango3Dのサイトで無料版との比較表があるのでそちらを
参照してください。
無料版ではCHITUBOXと比べて設定できる項目が少ないですが、あまり細かい設定しない人には十分かと思います。
大事なのは自動でサポートを付ける機能が優秀かどうかです。
同じモデルでCHITUBOXと比較してみました。
自動サポート機能比較
Lycheeで自動サポート機能を使用するとこんな感じでサポートが付きました。
設定は特にいじらず標準です。密度ノーマル。太さMedium。
モデルは0度、45度、90度で角度を変えて3体配置。
このモデルは以前に造形したことがあるのですが、そのときはプリンター標準のスライサーを使っていて、サポートが体にめり込んで生成されてたのでうまく除去できず苦労しました。Lycheeはちゃんと体の部分を避けてサポートを生成してくれてるようです。
ただ、あちこちに気になるところが・・
そこにサポートいる?特にディテールとかないけど?
他にも、
そこでOK?もっと端っこにつけたほうがよくね?とか。
CHITUBOXだとどうなるか。
同じ部分を比較してみたところ・・・
やっぱそうですよねぇ。
こっちも。
やっぱりそのくらい端につきますよねぇ。
なんとなく、CHITUBOXの自動サポート機能のほうが優秀?という感じがしなくもない。
あと、全体的にCHITUBOXのほうが、サポート先端の角度に無理がなく、ストレートに付けられるところはそのまままっすぐなのでスマートに見える。Lycheeはとにかく角度をつけるというポリシーなのか、ほとんど角度がついてます。
ちなみにCHITUBOXはこの先端部の角度を設定できて、Lycheeは設定ができません。(proだとできるようになるのかも?)
光造形出力で比較
サポートの付き方の見た目が悪くても実際に造形したときにしっかり造形できるならそれでいい、ということで試しにこの2パターンで造形をしてみました。
パッと見、両方とも問題なさそう。
でもよくみるとLycheeのほうが・・・
ん?なんか足がおかしい。サポートも途中からしか造形されてないな。
CHITUBOXのほうは問題なさそう。
別のところ。Lycheeのほうでライフルの下に伸びてるはずのサポートがない。
CHITUBOXはここも大丈夫。
他にもLycheeのほうはサポートがうまく造形できていない箇所があった。
この結果を見る限り、CHITUBOXのほうがよい?
でもプリンターのUV照射にばらつきがあるのかも。たまたまLycheeのデータを配置したほうが調子悪いのかも?と思ったので左右を入れ替えて造形して試してみました。
配置を入れ替えて再造形
なぜか別データでやってる。比較がわかりづらい・・
造形後
Lycheeのほうですけど、底面にビッシリつくはずのサポートがだいぶ欠損してます。
CHITUBOXのほうも下面の角は造形し損ねてました。でもほとんどのサポートは造形されてます。
逆サイド
こちらもLycheeはサポートの欠損が目立ちます。
CHITUBOXのほうはあご下に細いサポートがつくはずが2本ほど欠損してましたが、ベースから伸びてるサポートに欠損はないようです。
配置を入れ替えたのにやっぱりCHITUBOXのほうが良好でしたので、プリンター要因ではないと言えそうです。
2パターンの造形をして気が付いた点としては、
主にLycheeでサポートが根元から造形されない原因は、ベース面との接触形状にありそうです。
CHITUBOXは末広がり形状(一部ストレートあり)
一方、Lycheeはストレートです。
この違いがサポート造形の精度に影響してそうです。
CHITUBOXでも2回目の造形の際はストレート形状のサポートが1、2本欠損してましたし。
Lychee側も末広がりにすれば問題なさそうですが、残念ながら設定項目にいじれるところがありません。CHITUBOXも設定は見当たらないけどデフォルトで末広がり形状になります。
初期レイヤー層の数値を増やして根元部分のUV照射時間を7秒→60秒に延ばしてあげるという手も在りますが、余計に時間がかかります。
そこまでしてLycheeを使うべき理由も今のところ見当たらない、というのが本音。
まとめ
設定をいじってマイプリンターに合わせてチューニングすればどちらのスライサーでも満足いく造形はできそうですが、Lycheeは設定できる項目が少ないのでやや苦労しそうな感あり。
我が家のプリンターで使うにはCHITUBOXのほうがよさそうです。
標準設定で概ね満足いく造形ができます。
ただ、Lycheeもこれからに期待が持てそうです。