PointCloud

ものづくりに関すること。3Dプリンターとその関連ソフトやツールのこと。

MENU

光造形用のスライサー「CHITUBOX」と「Lychee」の比較

光造形機を使用するのに必須のスライサーソフト。無料のスライサーの選択肢があまりなく、多くの人が3Dプリンター標準のスライサーかCHITUBOXを使っているのではないでしょうか。

CHITUBOXもプリントの設定からサポートの設定まで調整が可能なので、別にいいのですが、他にもないかなぁと思って探していたら最近Lycheeなるものを見つけて、なかなか使えそうだったのでCHITUBOXと比較してみました。

Lycheeとは?

LycheeはMango3Dが開発したスライスソフトで無料版と有料版のproがあります。
無料版は機能制限がありますが普通に使えます。全ての機能が使えるpro版は月に数ユーロ支払うことで利用可能です。(年間契約で割引あり)

f:id:masayuki_sys:20210522185507p:plain

Mango3Dサイト


Lycheeの画面はこんな感じ

f:id:masayuki_sys:20210522185723p:plain

Lychee

見た感じは普通にいいと思います。
左側に基本メニューが並んでます。

プリントのセッティングがちょっと分かりづらいところにありますが、↓のような項目をいじることができます。

f:id:masayuki_sys:20210522190209p:plain

Lychee_プリント設定

初期レイヤーと通常レイヤー、リフトのスピード設定、レジンボトルの価格設定といった感じで、必要な項目は一通り揃っていそう。

次にサポートの設定を見てみます。

f:id:masayuki_sys:20210522190519p:plain

Lycheeサポート設定

このメニューが若干見づらいのですが、サポートの太さ、サポート密度、Islands Detectorなどの 設定が並んでます。Generate Automatic Supportで自動でサポートをつけてくれます。自動でサポートを付けた後に手動で追加削除することも可能です。
設定項目の中にはproの表示があって、proバージョンでしか設定できない項目があります。

例えば、サポートの柱の形状選択も無料版ではConeのみしか選べませんが、Pro版では他にも選択肢があります。

f:id:masayuki_sys:20210522192059p:plain

LycheePRO設定項目

Pro版で設定できる項目はMango3Dのサイトで無料版との比較表があるのでそちらを
参照してください。

無料版ではCHITUBOXと比べて設定できる項目が少ないですが、あまり細かい設定しない人には十分かと思います。
大事なのは自動でサポートを付ける機能が優秀かどうかです。
同じモデルでCHITUBOXと比較してみました。

自動サポート機能比較

Lycheeで自動サポート機能を使用するとこんな感じでサポートが付きました。
設定は特にいじらず標準です。密度ノーマル。太さMedium。
モデルは0度、45度、90度で角度を変えて3体配置。

f:id:masayuki_sys:20210522194108p:plain

Lychee自動サポート

このモデルは以前に造形したことがあるのですが、そのときはプリンター標準のスライサーを使っていて、サポートが体にめり込んで生成されてたのでうまく除去できず苦労しました。Lycheeはちゃんと体の部分を避けてサポートを生成してくれてるようです。

f:id:masayuki_sys:20210522194637p:plain

Lychee自動サポート2

ただ、あちこちに気になるところが・・
そこにサポートいる?特にディテールとかないけど?

f:id:masayuki_sys:20210522195413p:plain

Lychee自動サポート3

f:id:masayuki_sys:20210522195453p:plain

サポート付ける前

他にも、
そこでOK?もっと端っこにつけたほうがよくね?とか。

f:id:masayuki_sys:20210522195654p:plain

Lychee自動サポート4


CHITUBOXだとどうなるか。
同じ部分を比較してみたところ・・・
やっぱそうですよねぇ。

f:id:masayuki_sys:20210522200505p:plain

CHITUBOX自動サポート

こっちも。
やっぱりそのくらい端につきますよねぇ。

f:id:masayuki_sys:20210522200629p:plain

CHITUBOX自動サポート2

なんとなく、CHITUBOXの自動サポート機能のほうが優秀?という感じがしなくもない。

あと、全体的にCHITUBOXのほうが、サポート先端の角度に無理がなく、ストレートに付けられるところはそのまままっすぐなのでスマートに見える。Lycheeはとにかく角度をつけるというポリシーなのか、ほとんど角度がついてます。

f:id:masayuki_sys:20210522201503p:plain

自動サポート比較(左:CHITUBOX、右:Lychee)

ちなみにCHITUBOXはこの先端部の角度を設定できて、Lycheeは設定ができません。(proだとできるようになるのかも?)

光造形出力で比較

サポートの付き方の見た目が悪くても実際に造形したときにしっかり造形できるならそれでいい、ということで試しにこの2パターンで造形をしてみました。

f:id:masayuki_sys:20210522203409j:plain

光造形出力(左:CHITUBOX 右:Lychee)

パッと見、両方とも問題なさそう。
でもよくみるとLycheeのほうが・・・
ん?なんか足がおかしい。サポートも途中からしか造形されてないな。

f:id:masayuki_sys:20210522221843j:plain

Lychee

CHITUBOXのほうは問題なさそう。

f:id:masayuki_sys:20210522222015j:plain

CHITUBOX

別のところ。Lycheeのほうでライフルの下に伸びてるはずのサポートがない。

f:id:masayuki_sys:20210522222109j:plain

Lychee

CHITUBOXはここも大丈夫。

f:id:masayuki_sys:20210522222253j:plain

CHITUBOX

他にもLycheeのほうはサポートがうまく造形できていない箇所があった。
この結果を見る限り、CHITUBOXのほうがよい?

でもプリンターのUV照射にばらつきがあるのかも。たまたまLycheeのデータを配置したほうが調子悪いのかも?と思ったので左右を入れ替えて造形して試してみました。

配置を入れ替えて再造形

f:id:masayuki_sys:20210522222818p:plain

比較2

なぜか別データでやってる。比較がわかりづらい・・

造形後

f:id:masayuki_sys:20210522224322j:plain

造形(左:Lychee、右:CHITUBOX)

Lycheeのほうですけど、底面にビッシリつくはずのサポートがだいぶ欠損してます。

f:id:masayuki_sys:20210522224405j:plain

Lychee

CHITUBOXのほうも下面の角は造形し損ねてました。でもほとんどのサポートは造形されてます。

f:id:masayuki_sys:20210522224502j:plain

CHITUBOX

逆サイド
こちらもLycheeはサポートの欠損が目立ちます。

f:id:masayuki_sys:20210522224646j:plain

Lychee

CHITUBOXのほうはあご下に細いサポートがつくはずが2本ほど欠損してましたが、ベースから伸びてるサポートに欠損はないようです。

f:id:masayuki_sys:20210522224709j:plain

CHITUBOX

配置を入れ替えたのにやっぱりCHITUBOXのほうが良好でしたので、プリンター要因ではないと言えそうです。

2パターンの造形をして気が付いた点としては、
主にLycheeでサポートが根元から造形されない原因は、ベース面との接触形状にありそうです。
CHITUBOXは末広がり形状(一部ストレートあり)

f:id:masayuki_sys:20210522225625p:plain

CHITUBOXのサポート根元


一方、Lycheeはストレートです。

f:id:masayuki_sys:20210522225651p:plain

Lycheeのサポート根元

この違いがサポート造形の精度に影響してそうです。
CHITUBOXでも2回目の造形の際はストレート形状のサポートが1、2本欠損してましたし。

Lychee側も末広がりにすれば問題なさそうですが、残念ながら設定項目にいじれるところがありません。CHITUBOXも設定は見当たらないけどデフォルトで末広がり形状になります。

初期レイヤー層の数値を増やして根元部分のUV照射時間を7秒→60秒に延ばしてあげるという手も在りますが、余計に時間がかかります。
そこまでしてLycheeを使うべき理由も今のところ見当たらない、というのが本音。

まとめ

設定をいじってマイプリンターに合わせてチューニングすればどちらのスライサーでも満足いく造形はできそうですが、Lycheeは設定できる項目が少ないのでやや苦労しそうな感あり。

我が家のプリンターで使うにはCHITUBOXのほうがよさそうです。
標準設定で概ね満足いく造形ができます。

ただ、Lycheeもこれからに期待が持てそうです。