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ものづくりに関すること。3Dプリンターとその関連ソフトやツールのこと。

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3Dprinterでカメラを作る


3Dprinterでピンホールカメラを作ったのでメモ

 
 作ったのはこちら

 Thingiverse:495230  terraPin, a 120 Film Pinhole Photography System

 

 特徴
  ・ほとんどのパーツが3Dプリンターで作成可能
  ・ピンホールカメラなのでレンズは不要
  ・120サイズ(ブローニー)フィルムで撮影する
  ・シャッターは上げるのも下げるのも手動
  ・エクステンションで35mmと50mmが選択可能

  ・3脚に固定できる
 
1 必要なデータ
   Thingiverseからデータをダウンロードします。
 「Download This Thing!」をクリックして一式ダウンロードすることができますが、filesフォルダには大量のstlが。
どれをプリントすればよいのかよくわかりません。

そこで、自分の場合はfilesフォルダにある「terrapin_35mm_complete.zip」を取り出して展開。
できたフォルダの中にある4つのstlファイルだけをプリントしました。
①terrapin_35mm_extension_and_shutter
  普通のカメラでいう、レンズとシャッターの部分。35mmと50mmが選択できますが今回は35mm。
②terrapin_body_plate
  ボディ本体とフタ。
③terrapin_complete_sm_parts
  細かいパーツのセット。余計なものも多少含まれている。
④terrapin_stawp-gap
  光漏れ対策のパーツ?
この4つのstlファイルには複数のパーツがまとめられているものもあり、3Dプリンターのサイズによっては一気にプリントすることができません。その場合は3Dソフトを使って分割してあげるとよいでしょう。
 
または①~④のファイルの中身とfilesフォルダ内にある個別のstlファイルを見比べて同じものを探して個別にプリントすることもできます。一部、個別ファイルで用意されていないものもありそうですが。

それから、③のファイルのなかにはノブが2種類含まれていますが、実際にはどちらか1種類で十分です。



これはただのツールなのでプリントしなくてもよいです。ドリルのビットをはめてねじ回しとして使うようです。



2 プリント
  実際にプリントします。
  Thingiverseのページ内で推奨の設定が示されています。

  • Minimum of two perimeters all parts.
  • Minimum 3 solid layers top and bottom of printed parts.
  • Layer height 0.25mm (All vertical dimensions are multiples of 0.25mm).
  • Minimum infill 50% for any part that must be opaque ( I use at least 75% infill).
  →外壁は最小でも2周
   底面と天面は最小でも3層塗りつぶしめんを設けること
   積層ピッチは0.25mm
   インフィルは光漏れしないように50%以上にすること。
 ということです。
 プリントする際はすべてサポートなしでプリントします。
 フィラメントは光を透過しにくい黒が推奨されています。


 プリントするにあたって難易度が高めのパーツは以下の2つ。
 
  1つ目:ボディ
   サイズが大きく、プリント中にサイド部分が反ってしまう可能性高いです。
   自分はPLAでプリントしましたがやはり反って失敗しました。


  2つ目:エクステンション
   サイズがそこそこあって、オーバーハングもあるので、失敗する確率が比較的高いです。
   また、ボディと組み合わせるため、精度が悪いと上手くハマらないことも。X軸とY軸が直行していないときれいな四角にならず平行四辺形になってしまうので要注意。
   オーバーハングをきれいにプリントするためには、そこそこの質のフィラメントと冷却用のファンが必要でしょう。


  他の細かいパーツは特段難しくないです。
  プリント時間を短縮するために大物を0.5mmノズルでプリントして、小物を0.3mmノズルでプリントしました。
  全部0.5mmノズルでも作成可能ですが、シャッター回りなどは多少精密さが求められるので0.3mm使いました。



3 組み立て
 必要なパーツをプリントしたら組み立てに入ります。
 

 Thingiverseのサイトに決して親切ではないけど一応、組み立て説明書らしき画像はあります。
  組み立てにあたっては、3Dプリントしたパーツ以外にも材料が必要になります。
  最低限必要なもの
   ・M3六角ボルト ×2
   ・M3六角穴付ビス  ×1
   ・1/4インチ 六角ナット ×1
   ・0.1mm厚の銅版


  ①シャッター部分
 まずはピンホールを作るためにセットするサイズに切り取った銅版の中心に穴をあけます。必要な穴サイズはサイトに記載がありますが、35mmエクステンションの場合は0.26mmの穴を空けます。
 自分はコンパスの針で小さな穴を空け、そのあと0.3mmの虫ピンで調整しました。針が通り抜けずに途中で引っかかる程度。穴を空けたらやすりで磨いてバリを取っておきます。


銅版をセットします。



シャッターのパーツを乗せます。
 
 
エクステンションのパーツをスライドして嵌めて、六角ビスで固定します。ビスの締め付け具合でシャッターの動きを調整することができます。あまりスカスカにならない程度で締め付けておくとよいでしょう。  

パーツを組み合わせたらシャッター回りは完成。


 ②ボディ
  ボディの底に三脚固定用のナットを埋め込みます。
  ナットは1/4インチサイズのもの。できればフランジナットがよいそうですが、近所のホームセンターにはフランジナットがなかったので、ただの1/4インチナットです。接着剤で固定してボディ内側には光が入ってこないようにフタをしてしまいます。
                       

内側



 ③カバー(フタ)
  フィルムを巻き取るためのノブを取り付けます。内側からピンを通してノブに差します。取り外すようなものでもないので接着剤で固定してしまうけど、うっかりカバーと接着してノブが回らないということにならないように。



他の部品をボディに取り付けたらカバーを閉めます。



カバーを閉めるには六角ボルトで締め付けます。小さい三角形のパーツにボルトを嵌めることで工具なしにボルトを締めることができます。



4 フィルム
  フィルムはブローニーフィルムと呼ばれる120サイズのフィルムを使用します。
  現在カメラ店では取扱いが少なく、5本セットとかで売られていることが多いです。値段も高いです。

  中にはこのようなフィルムが5本入っている。
 

 フィルムをセットする際には、空のスプールが1本必要になります。
 この空のスプールにフィルムの先端をを巻きつけて、ノブを回すことで巻き取ります。
 自分は撮影比較用に購入したHOLGAに入っていたスプールを使用しました。単純な構造なのでデータを探して3Dプリンターで作ることもできそうです。


5 撮影
  実際に撮影した写真がこちら。フィルムプリントをスキャンしました。
  焦点距離はF135固定。露出時間は付属のPDFに表があるのでそれを参考にしますが、実際にはよくわからないので、デジカメで露出を調べてから、F値135のときのシャッタースピードを計算しました。
  撮影するときには手動でシャッターを開け閉めするのでぶれないように気を使います。三脚を立ててなるべくカメラが動かないように固定しました。

  ・屋外
   明るかったので、シャッタースピードは0.5s程度。
   予想外にきれいに写りました。緑や空の色もでてます。
   右上に見えるニョロニョロはプリントしたときのフィラメントくずが内部に残留していて写りこんだものです。フィラメントくずを取り除くことで写りこまなくなります。
   


 ちなみにHOLGA120PC(ピンホールタイプ)で撮影したのがこちら。
 同じフィルムを使っているのですが淡い感じの写りになりました。光が漏れているようで、白とびしている場所があります。また、HOLGAのシャッターはバネが入っているので、勝手に戻るようになっていますが、そのせいで反動があり、ブレやすい気がしました。



シャッタースピードに関しては、上の写真(3Dプリンタ製)を撮影する際に1秒、3秒、5秒と時間を変えて何枚か撮影しましたが結果はほとんど差が出ませんでした。何回か撮影すれば細かいこと気にせず大体で撮影できそうです。
屋外は1秒、屋内は5秒とか。

6 まとめ
  とりあえず撮影するところまではできました。
  市販のHOLGAと比べても遜色ない写真が撮影できます。フィルムカメラ(しかもブローニーフィルム)ということで撮影コストは高くつきますが味わいのある写真が撮れ、3Dプリントカメラということで話のネタにもなります。
  3Dプリンタで作成するものとしてはサイズ感もよく、難易度もそこまで高くないのでチャレンジするのにちょうどよい
モデルだと思います。

是非、チャレンジしてみてください。